Last Updated on 2023年5月26日 by mejisei-rehabilitation
※受傷直後や、生活に支障をきたすような強い足関節の痛みがある場合は運動を自分で行う前に整形外科の受診をおすすめします。
この記事では、当院の理学療法士が指導しているセルフエクササイズをいくつか写真を使用して紹介したいと思います。
現在“リハビリに通っている方”、または“以前通っていたけど運動を忘れてしまった”という方は是非復習として使用していただけると幸いです。
足関節捻挫(足関節外側靭帯損傷)とは1)2)
足関節捻挫(足関節外側靭帯損傷)は代表的なスポーツ外傷の一つであり、最も発生頻度の高い足関節外傷です。特に足関節を内側に捻る、内反捻挫が多く、その場合は足関節外側の靭帯を損傷することが多いです。一般人口の最大70%が生涯で発症すると言われているほど発生頻度が高い疾患でもあります。加えて高い再発率や合併症が早期のスポーツ復帰を妨げたり、後遺症として慢性足関節不安定症(Chronic ankle instability:CAI)が日常生活への制限やスポーツの長期的なパフォーマンス低下が生じたりします。
受傷後の時期によって対処法も異なりますので、各時期についてそれぞれの対処法を紹介していきます。
・急性期(受傷直後〜3日)
・亜急性期(3日〜10日)
・回復期(10日〜)
急性期(受傷直後〜3日)3)
この時期は特に「痛みを長続きさせないこと」「受傷した部位のさらなる受傷を防ぐこと」「回復を早めること」が大事になります。そのためにPOLICE処置※1が大事になります。患部外のエクササイズは積極的に行います。
※1.急性外傷に対する初期治療の頭文字をとったもの
Protection[保護]:1~3日の患部運動制限
Optimal Load-ing[適切な荷重]:痛みがない最適な負荷
Ice[冷却]:アイシング
Compression[圧迫]:サポーター、テーピング等の使用
Elevation[挙上]:心臓より高く挙上する
・股関節伸展トレーニング:殿筋(お尻の筋肉)を鍛えます
- うつ伏せになります。
- 片方の足を伸ばしたまま、真っ直ぐ上に上げます。
※注意ポイント:足を上げる際は腰が反りすぎないようにしましょう。
回数:10回×3セット程度
・股関節外転トレーニング:外側の殿筋(お尻の筋肉)を鍛えます
- 横向きになり上側の脚を伸ばして、下側の脚は軽く曲げます。
- 上側の脚を持ち上げます。体のラインにまっすぐ、もしくはやや後ろに上げるように意識しましょう。
※注意ポイント:脚を持ち上げる際に腰が反りすぎないようにしましょう。
回数:10回×3セット程度
・タオルギャザー:足趾の可動性向上、末梢循環の改善
- 床にタオルを敷き、その上に足をのせます。(最初は座って、慣れたら立ってやるのもOK)
- タオルを足の指で握る、はなすを繰り返します。
※注意ポイント:動かすのは足の指だけ、足部は固定して動かさないように注意します。
回数:2~3分程度
亜急性期(3日〜10日)
患部の炎症状態に応じてエクササイズを開始します。
・座位カーフレイズ(踵上げ):ふくらはぎの筋肉を鍛えます
- 椅子に座った状態で膝を90°曲げた位置に足を置きます。
- 母指球で地面を蹴るようにまっすぐ踵を上げます。
- 慣れてきたら上から手で足を押さえて負荷をかけます。
※注意ポイント:踵を上げるときは、小指荷重になりすぎないようにしましょう。
回数:20~30回程度
回復期(10日〜)
運動強度を少しづつ上げていきます。足関節可動域獲得と筋力向上を目指します。
・バランストレーニング:片足立ち
回数:1分×2~3セット程度
・立位カーフレイズ(踵上げ):ふくらはぎの筋肉を鍛えます
- 立った状態で、母指球で地面を蹴るようにまっすぐ踵を上げます。最後まで上げ切るように意識するとよりトレーニングになります。
- まずは両足から行い、痛みなく慣れてきたら、片足でも行います。
※注意ポイント:踵を上げるときは、小指荷重になりすぎないようにしましょう。
回数:10回×3セット程度
再発予防3)
予防対策として、
①バランストレーニングなどリハビリを3ヶ月以上続ける
②足関節・股関節周囲筋力を強化・改善すること
③足関節可動域制限を改善すること
以上の3つが推奨されています。 特に先行研究で①がエビデンスレベルが高く、推奨されています。
・バランス評価
まずはバランス能力が十分かチェックしてみましょう。簡単なテストを紹介します。
・foot lift test
方法:目を閉じて片足立ちして反対側の足を、立っている足のふくらはぎに接触させておきます。
30秒間で支持足の足底(足の裏、足の指)が床から離れた回数をカウントします。
5回以上離れてしまった場合は、バランス能力不良となります。4)
⇨もし、5回以上床から離れてしまった場合は、積極的なバランス練習が必要です!
実際のバランストレーニングは以下で紹介します。
・バランストレーニング
・片足立ち+足振り
- 片足で立ちます。
- 前・後(左・右)に反対の足を振ります。
※注意ポイント:足を振る際は、体は真っ直ぐにしたまま、足だけを動かします。
※バランスに自信のない人は、椅子の背もたれやテーブルなどを触りながら、まず狭い範囲で足を動かしてみましょう。そして、徐々に動かす範囲を広げていきましょう。
回数:10回×3セット程度
・片足立ち+バランスディスク(難易度:難しい)
- バランスディスクの上で片足で立ちます。
回数:1分×2~3セット程度
※注意ポイント:難易度は難しいので、転倒に注意しましょう。
※バランスディスクがない場合は、座布団やクッションを代わりに使っても行えます。
・Y字リーチ
- 片足で立ちます。
- 前方、左後方、右後方に、それぞれなるべく遠くに足をリーチします。
※注意ポイント:支えている足の踵は浮かないように注意しましょう。またリーチする足にはなるべく体重はかけないようにします。
回数:10周×2~3セット程度
・片足前後左右ジャンプ
- 片足で立ちます。
- 前方・後方(右・左)交互にジャンプします。
※注意ポイント:着地の際はふらつかないように、しっかり踏ん張って着地します。
回数:10回×2~3セット程度
・足関節可動域改善エクササイズ
- 片足を立て、足首の関節の前と後ろを固定します。
- 手で押さえているところを中心に、体重を前へかけて、元の姿勢に戻るのを繰り返します。
※注意ポイント:体重を前へかけた際に、踵が床から上がらないようにしましょう。
回数:2~30回程度
・足部アーチエクササイズ
- 椅子に座ります。親指以外の4本の指は床につけたままで、親指だけを上に上げます。
- 反対に、親指は床につけたまま、他の4本の指を上に上げます。
※注意ポイント:足の指以外は動かないように注意しましょう。
回数:2~30回程度
まとめ
捻挫後、強い痛みがある場合や、生活上の痛みが引かない場合などは、整形外科へ早めの受診をおすすめします。捻挫による靭帯損傷だけでなく、骨折などの合併症を引き起こしている場合も考えられます。
足関節捻挫は発生頻度が高く、軽視されがちな疾患ですが、再発・合併症。後遺症のリスクが高い疾患でもあります。そのため受傷後はしっかりと機能を高め、予防していくことがとても大事です。「”たかが”捻挫、”されど”捻挫」です。
特に再発・後遺症予防で大事なのが①継続的なバランストレーニング②足関節・股関節周囲筋力強化③足関節可動域改善になりますので、ここで紹介したトレーニングをぜひ継続的して行なってみてください。
引用文献
1)小林匠,足関節捻挫の病態と治療,日本アスレティックトレーニング学会誌2018;3(2):117-126
2)Delahunt E, et al. Br J Sports Med 2018;52:1304–1310.
3) 篠原純司,スポーツ活動における足関節捻挫,日本アスレティックトレーニング学会誌2018;3(2):127-133
4) 片寄正樹.小林匠.三木貴弘,足部・足関節理学療法マネジメント:株式会社メジカルビュー社,2018