Last Updated on 2023年10月23日 by mejisei-rehabilitation
※肩関節の強い痛みがある場合は運動を自分で行う前に整形外科の受診をおすすめします。
この記事では、当院の理学療法士が指導しているセルフエクササイズをいくつか写真を使用して紹介したいと思います。
現在“リハビリに通っている方”、または“以前通っていたけど運動を忘れてしまった”という方は是非復習として使用していただけると幸いです。
肩関節周囲炎とは?
肩関節周囲炎は一般的に四十肩、五十肩とも呼ばれています。明らかなきっかけがなく肩周囲の痛みが出現し、痛みが悪化したのちに、肩関節の動きが悪い時期を経て改善していきます。40 ~ 70 歳の年齢層の方が発症することが多く、人口の 2 ~ 5%が生涯に経験するといわれています。特に 40 ~ 60 歳の女性に多いとされています。
自然に改善することが多い疾患ですが、症状がなくなるまでに長い期間(1年~3年程度)かかることもあります。
転倒やスポーツ・運動中の肩のケガなどのきっかけがあってから肩の痛みが出現した場合は、別の原因がある可能性があるので、早めに医療機関を受診することをおすすめします。
病状に応じた対応をしましょう
肩関節周囲炎は、大きく分けて以下の3つの病期を経て改善するといわれています。
- 痛みが強く動きが悪くなる時期(炎症期)
- 痛みが改善したが、関節の動きが悪い時期(拘縮期)
- 動きが改善していく時期(寛解期)
症状によって必要な対応が異なりますので、病状に応じた治療の選択が重要です。
炎症期(じっとしてても痛みがある時期)の対応
痛みを緩和するための対応が重要です。
夜間や安静時の痛みが強い場合は、医師による痛み止めの内服薬処方や炎症をおさえるための注射などを行うことがあります。
リハビリテーション(理学療法)としては、まず痛みの起きにくい姿勢や夜間寝る際のポジションの指導を行います。
・痛みが強くて眠れない時のポジショニング例
痛みが緩和する肩のポジションは状態によって異なりますが、一例として下記の写真のようなポジションは痛みが生じにくいことがありますので、痛みが強く寝られないときに試してみてください。
痛みのある時期には、肩関節のストレッチなどを積極的に行うことは難しいですが、背中や肩甲骨周囲の運動は疼痛の無い範囲で実施することが重要です。姿勢や肩甲骨の動きが悪くなってしまうと肩の動きにも悪影響があります。
肩甲骨・脊柱(背骨)の運動をいくつか紹介します。痛みを悪化させない程度にやってみましょう。一度に行う回数は少なくても良いので、一日のうちにこまめにやることが大切です。
・四十肩・五十肩の肩甲骨・背骨の運動
拘縮期(肩が動かない時期)の対応
痛みが減少したが可動範囲の制限が強い時期である拘縮期には、徐々に肩関節の可動域を広げていくために理学療法士による関節の運動や、ご自身で行う運動、ストレッチなどが必要です。
手を垂らして実施する振り子の体操は、比較的早期から疼痛少なく実施していくことができます。疼痛の無い範囲で実施することが基本です。
・痛みが減ってきたタイミングでの運動
棒を使用してご自身の症状のない側の手でアシストしながら動かす方法もあります。棒を使用したバンザイ方向への動きは痛みが出やすいため、痛みが伴う場合は無理に実施しないようにしましょう。
座ってできる体操としては下の図のようなストレッチの方法もあります。状態に応じてやってみましょう。
寛解期(良くなっていく時期)の対応
寛解期は痛みや可動範囲の制限が改善し、日常生活での制限がなくなってきたが、まだ反対側と比べて可動域や筋力が少ない時期です。ご自身の職業やスポーツに必要な肩関節の機能を獲得するために、継続したストレッチや筋力トレーニングが必要な場合があります。ご自身の目標に沿ったエクササイズなどを選択して継続して実施していきましょう。
下の図のような積極的なストレッチも疼痛がない範囲でやっていきましょう。
まとめ
肩関節周囲炎は、時間がかかっても自然に改善することの多い疾患です。痛みや可動範囲の制限が強い時はつらいですが、病状に応じた適切な対応をとりつつ進めていくことで、もともとに近い状態まで改善することが可能です。
症状が強い場合には整形外科などの医療機関を受診して、適切な対応について医師や理学療法士に相談することをおすすめします。
また、スポーツや何らかの外傷などで肩を痛めた場合には、肩関節周囲炎以外の損傷がある可能性がありますので、自然に改善しない場合には整形外科の医師に相談することをおすすめします。
参考資料
- 理学療法ガイドライン第二版
- Zhang J, Zhong S, Tan T, Li J, Liu S, Cheng R, Tian L, Zhang L, Wang Y, Liu F, Zhou P, Ye X. Comparative Efficacy and Patient- Specific Moderating Factors of Nonsurgical Treatment Strategies for Frozen Shoulder: An Updated Systematic Review and Network Meta-analysis. Am J Sports Med. 2020
- Hand C, Clipsham K, Rees JL, Carr AJ. Long-term outcome of frozen shoulder. J Shoulder Elbow Surg. 2008;17:231-236.