Last Updated on 2023年4月4日 by mejisei-rehabilitation
※強い膝関節の痛みがある場合は運動を自分で行う前に整形外科の受診をおすすめします。
この記事では、当院の理学療法士が指導しているセルフエクササイズをいくつか写真を使用して紹介したいと思います。
現在“リハビリに通っている方”、または“以前通っていたけど運動を忘れてしまった”という方は是非復習として使用していただけると幸いです。
変形性膝関節症とは1)
変形性膝関節症は、関節軟骨や半月板,軟骨下骨,靱帯などの関節構成体が変性して生じる疾患です。男女比は女性に多く、約 800 万人が疼痛や硬さ,腫れなど何らかの症状を有していて、40 歳以上で有病率が約 55%,有症状者が 1800 万人に達するといわれ, 要介護への移行リスクが約 6 倍あることが指摘されています。
本症は運動器障害による移動機能低下を生 じるロコモティブシンドロームの代表的疾患であります。
・肥満(過体重)
・女性
・高齢
・膝関節外傷の既往
・膝関節に負荷をかける活動性(職業)
・大腿四頭筋の筋力低下
黄色いマーカーの項目は、発症のリスクと、変形性膝関節症による痛みが生じるリスクが2重になっている項目です。
特に、体重増加と大腿四頭筋の筋力低下はリハビリでの改善が見込めるため解説していきます。
エビデンスに基づいた推奨運動
変形性膝関節症に対して変形性膝関節症診療ガイドライン2023-整形外科学会より効果のある運動がまとめられていたので紹介します。
・筋力増強トレーニングを週 5 日,5 週間2)
・膝周囲と股関節外転筋力の筋力増強トレーニングと痛みに対する教育を週 4 日,12 週間3)
・筋力増強トレーニングとエアロビックエクササイズを組み合わせた運動を 50~60 分、週2回、8週間4)
・太極拳を週に 2 日,12 週間5)
・ヨガ教室を週 1 日 60 分間を 8 週間6)
これらの運動を行い、疼痛や筋力、日常生活動作の改善が見られました。
実際にこの運動を行い続けるのは難しいですが、運動を行うことは強く推奨されております。
体重増加に対しては、有酸素運動と言われるウォーキングやプールでの歩行などが推奨されております。
その中でも、変形性膝関節症にとって大腿四頭筋の筋力は非常に重要であるため、大腿四頭筋について解説していきます。
膝関節の痛みで重要な筋肉は?
膝痛で重要と言われている代表的な筋肉は大腿四頭筋です。
矢印で指している部分が大腿四頭筋です。太ももに存在し、身体の中でも最も大きい筋肉のことです。 大腿直筋、外側広筋、内側広筋、中間広筋の4つによって分けることもできます。姿勢の保持や階段昇降などで重要な機能を担っております。
大腿四頭筋の筋力トレーニング
大腿四頭筋のトレーニングは膝関節痛にとって非常に重要なキーポイントとなっております。
大腿四頭筋の筋力低下が膝痛の原因になりうる6)といった報告もあり筋力低下を起こさないようにしっかりと予防をする、ナタはすでに痛みが出てしまった場合は筋力トレーニングを行い疼痛の軽減を目指すことが重要です。
トレーニングの負荷は一人ひとりの状態によって異なるため、ここでは痛みが現在あるかないかで分けて紹介したいと思います。
トレーニング:痛みがある場合
現在痛みがある方は、痛みの様子をうかがいながらトレーニングを進めましょう。痛みが強い場合は1度、整形外科への受診をおすすめ致します。
-
タオルつぶし(膝伸ばし):膝を伸ばす筋肉を鍛えます
1.ベッド上で膝を伸ばして膝裏にタオルを置きます。
2.タオルをつぶすように膝を伸ばします。この際にかかとが少しベッドから浮くようなイメージで行います。膝のお皿が動き、太ももに力が入ることを確認しましょう。
回数:10回×3セット程度
-
膝の曲げ伸ばし(heel slide):膝の曲げ伸ばしの動きをなめらかにします
1.外側の手で太ももの後ろ、内側の手ですねを持ちます
2.かかとを床に滑らせつつ、手で動きを補助して膝を曲げます。10回程度、曲げ伸ばしを繰り返します。
回数:10回×3セット程度
-
お尻上げ hip lift: お尻の筋肉を鍛えます。
1.仰向けになり膝を立てます。
2.お尻を持ち上げます。背中の下の方から順にあげるように意識しましょう。
※注意ポイント:首に負担をかけすぎないように気をつける。
回数:10回×3セット程度
-
外転筋トレーニング: 股関節の横側の筋肉を鍛えます
1.横向きになり上側の脚を伸ばして下側の脚を曲げます。
2.上側の脚を持ち上げます。体のラインにまっすぐ、もしくはやや後ろに上げるように意識しましょう。
※注意ポイント:脚を持ち上げる際に腰が反りすぎないようにしましょう
回数:10回×3セット程度
トレーニング:痛みがない場合
痛みがない場合も、上記のトレーニングは実施することをおすすめします
-
かかと上げ(つま先立ち): ふくらはぎを鍛える運動
1.壁に手をついて真っ直ぐたちかかとを上げ下げします。
2.右の写真は後ろからみた図です。人差し指あたりに体重を乗せるようにしましょう。
回数:10回×3セット程度
-
片足立ち: バランス機能のトレーニング (太ももやお尻の筋肉、ふくらはぎの筋肉にも効果的)
1.自宅で行う場合はバランスを崩した際に掴まれる箇所がある場所で行います。
2.バランスを取りながら脚をあげます。これを左右で行います。
回数:60秒1回ずつ
-
スクワット: 足の筋肉を鍛える運動
1.肩幅に脚をひらき真っ直ぐに立ちます。
2.骨盤を前に傾け股関節と膝関節を曲げます。この際に膝が前に出すぎないように注意。
3.できる場合は膝を90°くらい曲げてみましょう。
※注意ポイント:膝を曲げ始めたときにはお辞儀をするように頭も前に傾けると膝への負担は減少します。
回数:10回×3セット程度
-
ランジ :太ももの筋肉のトレーニング
1.下が安定した場所に立ちます。
2.片方の足を前方に出し、膝を曲げます。この際に膝がつま先より前に出ないように気をつけます。
※注意ポイント:画像では膝関節は90°程度曲がっていますが、慣れていないうちはほとんど曲げないで脚を前に出すだけでも効果はあります。
まとめ
今回紹介した運動や有酸素運動といったものを行う際には、必ず痛みの具合や体力と相談し、軽い負荷の運動から行うようにしましょう。
ガイドラインにも示されていたとおり、適度な運動を行うことにより痛みの改善が図れることが多いため適度な運動を習慣的に行えるように少しずつ始めていきましょう。
また、1ヶ月以上膝の痛みがある場合は1度整形外科への受診をおすすめします。
引用文献
1)変形性膝関節症診療ガイドライン2023-整形外科学会
2) Anwer S, et al. J Phys Ther Sci. 2014;26(5):745-78.
3) Bennell KL, et al. Arthritis Care Res (Hoboken). 2016;68(5):590-602.
4) Braghin RMB, et al. J Bodyw Mov Ther. 2018;22(1):76-82.
5) Wang C, et al. Arthritis Rheum. 2009;61(11):1545-53.
6) Cheung C, et al. BMC Complement Altern Med. 2014;14:160.
7) Muraki S, et al. BMC Musculoskelet Disord. 2015;16:305.