Last Updated on 2023年12月17日 by mejisei-rehabilitation
※腰部や背部に強い痛みがある場合は運動を自分で行う前に整形外科の受診をおすすめします。
この記事では、当院の理学療法士が指導しているセルフエクササイズをいくつか写真を使用して紹介したいと思います。
現在“リハビリに通っている方”、または“以前通っていたけど運動を忘れてしまった”という方は是非復習として使用していただけると幸いです。
圧迫骨折とは
背骨の椎体部分の骨折で、主に前方にある椎体部分がつぶれたように扁平になってしまう状態になることが特徴です。(図参照)
骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン作成委員会 編:骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン
2015 年版 . 東京 . ライフサイエンス出版, p30, 2015
主な原因と病態
年を重ねるとともに骨は弱くなっていきますが、より進行すると骨粗鬆症に陥ります。
骨粗鬆症の方や、骨密度の低下した方などが転倒して尻もちをついてしまったときや前かがみ姿勢から重いものを持ち上げるときなどに背骨に対して縦方向のストレスが生じ、圧迫骨折になってしまうことが主な原因として挙げられます。
骨粗鬆症が進行するとくしゃみをしたときや体を捻ったとき、洗面所で顔を洗う動作などでも圧迫骨折になってしまう場合があります。また、いつのまにか骨折してしまっている例もあります。
骨粗鬆症とは
骨粗鬆症の定義
・YAM(Young Adult Mean:若年成人平均値)で骨密度が70%未満の状態になってしまう状態
・腰椎では20~44歳、大腿骨近位部では20~29歳の健康な女性の骨密度平均値を100%として、それに対して何%である かを比較するための指標。
脊椎圧迫骨折は骨粗鬆症による脆弱性骨折のうち最多のものであり、50歳女性が一生のうちに脊椎椎体骨折をおこす確率は約40%、有病率 は60歳代では8~13%、70歳代では30~40%と推計されています。
(介護予防の推進に向けた運動器疾患対策に関する検討会.2009年8月)
骨折がよく起きる場所とは
「みぞおち」の後方にあたる背骨(胸腰移行部)や下部胸椎、上部腰椎で好発し、骨密度の低下しやすい閉経後の女性で特に多い傾向があります。
圧迫骨折の症状とは
初期では骨折周囲の部分や腰部、時に臀部や下肢にだるさや疼痛、しびれなどを生じます。じっと座っていても疼痛が発生し、背骨の動きが生じた際に疼痛が発生することが多く、特に起き上がり動作、立ち上がり動作、かがむ動作で強い疼痛が発生します。いつのまにか骨折している例では無症状の方もいます。
治療
・保存療法
痛みの強い場合は安静を基本として、コルセットなど装着してなるべく患部を動かさないようにしていきます。
・手術療法
1) 経皮的椎体形成術(BKP = Baloon Kypo ‐plasty)
圧迫されてつぶれてしまった背骨の椎体の中にかたい風船を入れて膨らませることでつぶれた部分の補正を図ることができます。圧迫骨折で生じた背骨の変形を防ぐことができます。
手術時の侵襲が少なく、背骨の変形を改善し、動いてしまう骨折部分を固定できるため、疼痛の軽減を図ることができます。
背骨の変形が猫背や側弯なの姿勢の変化による後遺症の要因になりやすいですが、早期から予防することができます。
2) 脊椎固定術
スクリューを使用し上下の骨を固定します。固定力が強いですが長期の入院やリハビリも必要になる方法です。
・薬物療法
疼痛が強い場合は鎮痛薬と骨粗鬆症の治療がメインとなります。
骨粗鬆症での薬物治療は大きくは3つに分類されます。
1) 骨吸収を抑制する薬
骨吸収がゆるやかになると、骨形成が追いついて新しい骨が骨の吸収された部位にきちんと埋め込まれ、骨密度の高い骨が出来上がります。
女性ホルモン製剤(エストロゲン)、ビスフォスフォネート製剤、カルシトニン製剤(注射)など
2) 骨の形成を促進する薬
活性型ビタミンD3製剤、ビタミンK2製剤、テリパラチド(副甲状腺ホルモン)
3) その他
カルシウム製剤
エクササイズ(リハビリ)
① 胸開き座位
下の画像のように、軽く胸を開くような形で肩甲骨を寄せます。
これを5〜10回程度繰り返します。
② ドローイング
座った姿勢で、下腹部を引っ込めるような形で力を入れます。
これを、10回程度繰り返します。
③ 座位下肢エクササイズ(足趾、足関節、膝、股関節)
骨折直後は痛みが強く、歩行などが困難になり、筋力低下が顕著に生じてしまう可能性があります。
そのため、座ったまま足の指を動かしたり、つま先を上げたり、踵を上げるような運動を行うことで極端な筋力低下を防ぐことができる可能性が高まります。
④ 骨折直後にやってはいけない運動
禁忌
・背中を丸めた動作、腹筋エクササイズなどの前かがみになる運動
・受傷初期はヒップリフトなど脊柱屈曲+骨折部位に縦方向へストレスのかかる動作
日常生活で気をつけること
・痛みのあるうちは前かがみ動作や体を捻るような動きは避ける
・下に落ちているものを拾う際は膝を曲げて前かがみにならないようにする
・靴の脱ぎ履きは前かがみにならないようにし、足を対側の膝に乗せて履く
・重いものの持ち上げ、家具などの移動
・日常生活ではなるべく起きておく、寝たきりにならない
・座位姿勢ポイント
➡なるべく背中を伸ばした姿勢でいることを心がける。
テーブルなどに手や肘を置くと少し楽に座位姿勢を保てます。
痛みの強い場合や長時間になる際はリラックスできる姿勢に変えたり、立ち上がったりなど姿勢を変えるようにする。
逆に良くないのは背中を丸めた状態で長時間じっとしていることです。
・立位姿勢ポイント
➡受傷直後はしっかりとコルセットを着用して座位姿勢の時と同じく、背中を伸ばした姿勢でいることがよいです。杖や歩行器などを使用することでも楽に立位を保てます。
痛みのある際は無理に伸ばそうとせず、椅子に座って休んだりテーブルや歩行補助具などを頼って背中を伸ばすように心がけてみてください。
踵の方にばかり体重がかかってしまうと骨盤が後傾してくるため自然と背中は丸まってきてしまい背中を伸ばす際に無理が生じてしまいます。
つま先にも体重をかけられることが必要になってきます。
・起き上がり方ポイント
➡側臥位の状態から足をベッド下におろし、足の重さを利用して背中をなるべく丸めないようにして手を使って体を起こします。
ベッド柵を利用したり、電動ベッドなど使える場合は上体を起こすギャッジアップ機能を利用してなるべく痛みの少ないように起き上がれるとよいと思います。
・立ち上がり方
➡浅く腰かけて背中はなるべく伸ばしたまま、テーブルや椅子の座面など手の支えも使いながら足の力でなるべく立ち上がります。