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Last Updated on 2023年6月28日 by mejisei-rehabilitation

この記事では、当院の理学療法士が指導しているセルフエクササイズをいくつか写真を使用して紹介したいと思います。
現在“リハビリに通っている方”、または“以前通っていたけど運動を忘れてしまった”という方は是非復習として使用していただけると幸いです。

 

腰椎椎間板ヘルニアとは

背骨と背骨の間には、クッションの役割を果たす「椎間板」という組織があり、その中心には「髄核」と呼ばれるゼリー状の組織が存在します。重たいものを持ったり、体を捻ったりすることがきっかけで髄核が後方に飛び出た状態のことをヘルニアと言います。後方に突出した髄核が神経に触ることで、腰痛、脚のしびれ、下肢の脱力感、感覚障害、膀胱直腸障害などの症状を誘発します。発症率は男性の方が女性の3倍以上多いとされており、好発年齢は20〜30代が65%を占めます。1)

※膀胱直腸障害とは?
膀胱や直腸の機能を司っている神経が障害されることにより、排尿や排便などに支障をきたす状態のことを言います。頻尿、残尿感、便が出にくいなどの軽い症状から、重度になると失禁(尿・便をもらしてしまう)、尿閉(完全に尿が出なくなってしまう)などの症状をきたすことがあります。
重度のヘルニアで認めることが多く、手術が必要となりますが、発生頻度は0.6~6.6%と概ね低率であるとされています。2)

経過

ヘルニアは炎症がおさまると自然に吸収され、ヘルニアのサイズが大きいほど吸収されやすいと言われています。現時点でヘルニアの吸収が始まる時期を明確にした報告はありませんが、60%以上の例で2〜3ヵ月以内に著明に吸収されると報告されています。3)

 

時期によって対処法が異なりますので、各時期についてそれぞれの症状と対処法を紹介していきます。

| 急性期(発症から3〜4週程度)

どの姿勢でも痛みを感じたり、痛みで眠れないなど強い痛みが生じている時期

| 慢性期(3週〜3ヶ月程度)

前屈など疼痛誘発肢位を取らなければそれほど痛みを感じなくなってくる時期

| 維持期(3か月以降

日常生活では痛みを感じづらくなっており、再発予防のため運動負荷を上げていく時期

 

急性期

この時期は炎症が起きている状態のため、まずは安静と安楽肢位を見つけることが大切です。

| 安楽肢位

姿勢と椎間板の内圧(腰の負担)の関係 出典:Nachemson.1976

椎間板への負荷は仰向け→立位→座位の順で強くなります。4)

そのため、痛みが強いうちはなるべく座位を避けるのが理想です。座る時間が長い方は、下記の写真のようにタオルを坐骨の下に入れるなどして骨盤を立てて腰椎が丸まらないようにしたり、正座をすることで痛みの軽減を図れることがあります。※炎症が強い場合は上記の姿勢を取っても改善が見られないこともあります。ご自分の1番楽な姿勢を探して取るようにしましょう。

| 禁忌肢位:前屈、側屈、回旋

前屈をすると髄核が後方に移動するため、炎症を助長させてしまう可能性があります。そのため重い荷物を持つ、かがむなどの動作をする際は、膝、股関節を曲げて極力腰を曲げないよう注意しましょう。また後ろの物を取る際など、身体を捻ったり倒したりすることもこの時期は避けましょう。

 

| エクササイズ

ヘルニア患者は腰椎の不安定性を有している割合が健常者よりも高い!5)

通常、人の身体は関節や靭帯、筋肉で安定させていますが、ヘルニア患者は全身の関節が健常者と比べて「緩い」との報告があり、腰椎の関節同士が緩いことが、ヘルニアのリスク因子とされています。そのため骨での安定性が得られない分を体幹の筋力を高めて不安定性を補ってあげる必要があります。腰椎の安定化には腹直筋、腹斜筋、腹横筋などの腹筋群と多裂筋、最長筋などの背筋群の筋力が必要になります。

 

        ビジブル・ボディのご厚意による画像

 

その中でもコルセットのような役割を果たしてくれるのが腹横筋と言われており、腰椎の安定化に大きく関与します。そのため「コルセット筋」である腹横筋を鍛えるトレーニングを2つご紹介します。

 

    ビジブル・ボディのご厚意による画像

 

ドローイン:腹横筋トレーニング(腹部をへこませるトレーニング)

1.仰向けになり、膝を曲げて深呼吸していきます。

2.息を吸う際にお腹を膨らませた後、なるべくゆっくり息を吐きながらお腹をへこませていきます。

3.「5秒鼻から吸って7秒間かけて口から吐く」を10回~20回

 

ブレーシング:腹横筋トレーニング(腹部を横方向へ膨らませるトレーニング)

1.仰向けになって膝を立て、脇腹に指を当てます。

2.指を押し返すイメージでお腹を横に膨らませていきます。膨らんだ状態をキープしたまま吐きます。

※腹直筋という前面の筋を硬くするのではなく、脇腹の腹横筋を硬くするイメージで行いましょう。

 

慢性期

痛みが軽減してきたら徐々に腰周りの可動域改善と筋力強化を図っていきます。

Cat&dog:脊柱-骨盤の可動域訓練(10回×2セット)

 

1. 肩の真下に両手、骨盤の真下に膝が来るように四つんばいになります。
2. 目線をおへそに向けながら、骨盤を持ち上げ、背中を上げて丸みを持たせるように伸ばします。
3. 目線を上げて、骨盤を前傾させながら背中を反らしていきます。

 

 

プランク:体幹トレーニング( 30秒〜1分)

 

1. 両肘を床につけ、うつ伏せになる
2. 頭、背中全体、腰、かかとが一直線になるように腰を浮かせ姿勢をキープする
※腰が下がってしまう方は膝をついても構いません。

ダイアゴナル:体幹トレーニング(5秒キープ×左右5セットずつ)

1.  肩の真下に両手、骨盤の真下に膝が来るように四つんばいになります。
2. .頭からお尻の位置はいっさい変えずに、対角線上の腕と脚を上げていき背骨の高さで伸ばします。

※このとき手と足を引っ張りあってお腹をのばすようにしてみてください。

※バランスを取りづらい方はまずは手足を低めの位置にして挑戦してみてください。

 

維持期:再発予防

コモドストレッチ:股関節可動域改善(左右10回ずつ)

 

1.足を前後に開き、前足の足底を床にしっかりをつけます。

2.お腹を床に近づけるイメージで体を沈めていきながら胸式呼吸と腹式呼吸を交互に10回行います。

※体が硬い方は肘ではなく手のひらで支えたり台を使うようにしましょう。

 

ロールダウン-ロールアップ:背骨の分離運動と腹筋運動(10回×2セット)

 

1.長坐位で骨盤を立て、手を前方に伸ばした状態からスタート

2.骨盤を後傾させ、背骨を1つ1つベッドにつけていくイメージでゆっくり頭を降ろしていく。

3.寝た状態から長坐位の姿勢まで背骨を1つ1つベッドから離していきましょう。

※写真は膝を伸ばしていますが、膝を曲げた状態から練習し、慣れてきたら膝を伸ばすようにしましょう。

 

手術療法

保存的治療を一定期間行っても改善しない場合に適応となります。保存的治療後に手術にいたるのは2〜5割程度と幅があり、術前の症状の強さにある程度関係しています。6)

しかし、脚に力が入らない(歩いていると膝がガクッとなる、つま先が上がらない)、膀胱直腸障害(排尿・排便障害がある)などの症状がある場合などは早期に手術を行うことが望ましいとされているため、上記の症状がある場合は早期に近隣病院への受診をおすすめします。

まとめ

腰椎椎間板ヘルニアは年齢、性別関係なく誰にでも起こりうる疾患です。

しかし腰周りの柔軟性と体幹筋力を維持し、腰に負担のかからない生活を継続することで予防することが可能な疾患でもあります。

ここで紹介したトレーニングを是非継続して頂き、再発を予防していきましょう。

 

1)日本整形外科学会

2)Nobuaki K ,et al. Lumbar Disc Herniation with Bladder and Rectal Dysfunction 中四整会誌 7, (2) 365~369 1995

3)Komori H, et al. The natural history of herniated nucleus pulposus with radiculopathy. Spine (Phila Pa 1976)1996; 21(2): 225-229.

4)Nachemson.Nachemson : The lumbar spine an orthopaedic challenge1976

5)Han WJ, et al. Generalized joint laxity is associated with primary occurrence and treatment outcome of lumbar disc herniation. Korean J Fam Med 2015; 36(3): 141-145.

6)DeLong WB, et al. Timing of surgery in cauda equina syndrome with urinary retention: meta-analysis of observational studies. J Neurosurg Spine 2008; 8(4): 305-320.

 

 

 

 

 

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